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トチの実を拾ってきた。
コロコロとしたこの愛嬌がある形が気に入って、毎年この時期には思わず拾ってしまう。
英彦山にはトチの古木が何本かあるが、この樹は元来英彦山にはないもので、かつて
一帯に棲んでいた木地師たちが植えたものではないかと云われている。
木地師とは、その昔トチ・ケヤキ・タブ・などを轆轤(ろくろ)を使い、椀などの木工製品を
作ることを生業としていた職人集団の事で、日本全国の山中にその材料を求めて散らばっていたと
いいます。
明治初期までは、全国各地で朝廷・幕府の許可を受けた木地師達が、良質な材木を求めて
20〜30年単位で山中を移住していたという。
英彦山のトチの樹は、その痕跡を物語るという事になります。
英彦山の麓の集落、唐ヶ谷にある筒井神社。
そこの境内にあるトチの樹は、樹齢を誇り県の天然記念物にも指定され、毎年この時期に
なると、沢山の実をつけている。
そして、豊前坊のトチの樹。
栃の実の つぶて颪や 豊前坊 久女
・とちのみの つぶておろしや ぶぜんぼう
英彦山をこよなく愛した女流俳人杉田久女は豊前坊を訪れ、折しも秋本番の頃のトチの実が
しきりに落ちるその様をこのように詠んだ。
この句のおかげで豊前坊のトチの樹はすっかり有名になり、境内の句碑を訪ねて来る人や、
有難く実を拾って持ち帰る人たちが、この時期には多くなる。
落ちているトチの実一つにも、秋の深まりを感じるこの頃です。
★ つれづれに一句
訪ね来て 句碑の心に 触るる秋 yamahiko
・たずねきて くひのこころに ふるるあき